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まず一言レビュー
タイムループの仕組みじゃなく、タイムループの気まずさで恋を進める。
8月31日が何度も繰り返される世界で、同じ景色が続くほど、むしろ心だけが擦れていく。第1話はその感触を、説明より先に体感させてくる。
作品データ
- 作品名:8月31日のロングサマー
- 作者:伊藤一角
- 第1話サブタイトル:「ループする8月31日」
- 公開日:2023年03月30日(コミックDAYS掲載) コミックDAYS
- 導入:何度も繰り返す8月31日の中で出会った高校生の二人(鈴木くん/高木さん)。記憶を繰り越せるのは二人だけ。原因として示唆されるのは、鈴木くんが夏休みにやり残した男子最大の目標…。
ここが面白い
1)ループ物の快感を謎より先に関係へ振り切る
タイムループ作品って、普通は「なぜループしてるの?」の謎が推進力になる。
でも本作は第1話の時点で、読者の興味を「この二人、どういう距離感でこの地獄を回すの?」へ寄せてくる。
同じ日を繰り返すのに、二人の会話は同じにならない。ここで勝ってる。
2)記憶を持ち越せるのは二人だけが、恋のルールを即席で作る
この設定、恋愛で言うなら「二人だけが同じ秘密を共有してる」状態。
秘密は親密さを生むけど、同時に逃げ道も塞ぐ。
第1話は、ループという異常事態を二人の密室に変換して、ラブコメの土俵に持ち込むのが上手い。
3)8月31日という季節の終端を固定したのが、情緒として強すぎる
8月31日って、カレンダー上はただの日付でも、体感は「終わる側の匂い」がある。
夏休みの宿題、やり残し、告白、帰省、部活、全部が“締切”に追われる日。
その日が永遠に固定されるって、ロマンじゃなくて、わりと残酷。
この残酷さが、第1話の空気を引き締めてる。
僕がこの第1話で好きだったポイント
- ループの説明を、読者に理解させる前に納得させるテンポ
- 二人の距離が縮む瞬間が、甘さより先に「実務」になってるところ
(同じ日を回すなら、会話も行動も、だんだん効率化してしまう。そこが恋の敵になる)
こんな人に刺さる
- タイムループの設定勝ちより、関係性の変化で読ませる作品が好き
- 青春ラブコメが好きだけど、砂糖100%より、少し苦い方が好き
- 「やり残し」や「締切」に弱い(=8月31日が刺さる)
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読める場所(公式)
- コミックDAYS(第1話):コミックDAYS
- 講談社・モーニング公式(作品紹介):モーニング公式サイト
- 購入
まとめ
『8月31日のロングサマー』第1話は、ループの謎じゃなく、ループの関係の圧で読ませる青春タイムループ。
同じ日が続くほど、恋はラクになるどころか、むしろ難しくなる。
その難しさを、説明じゃなく空気で伝えてくるのが、この1話の強さ。