はじめに──宇宙最強のおばあちゃんに、完全にやられた
ども、バンブークエストっす。
ここ最近は「バイブル考察」で、俺の人生をつくってくれた昔の名作ばかり語ってきました。今回はちょっと寄り道して、いま現在進行形で追いかけている漫画の話をさせてください。
ヨシアキ先生の『雷雷雷(らいらいらい)』です。
昨日、最新話まで読み返して、改めて思いました。この漫画、面白すぎる。借金を抱えた18歳の女の子が、宇宙人に体をいじられて宇宙害獣に変身できるようになり、そのまま軍需企業に就職する。あらすじだけ聞くとハードなのに、ギャグはゆるくて、バトルはキレキレで、気づいたら泣かされている。
しかも今、作中では「人類最強の英雄」と呼ばれる筋骨隆々のおばあちゃんが大暴れしていて、ネットでもじわじわ話題になっています。
この記事では、マンガワンで配信中の第53話(後編)までの内容をもとに、あらすじ、キャラクター、伏線、今後の展開を考察します。
⚠️ 関係者の皆様、なにか不都合な点などございましたらすぐにご連絡ください。当記事は即刻削除いたします。
※ここから先は、最新話までのネタバレを含みます。単行本派の方はご注意ください。
出典:マンガペディア「雷雷雷」、Togetter(2026年10月25日)、マンガワン『雷雷雷』第53話(後編)

第1章:作品概要──宇宙人との戦争から50年、借金少女が軍需企業へ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作者 | ヨシアキ(旧名義:芳明慧) |
| 掲載 | 小学館のマンガアプリ「マンガワン」とWebサイト「裏サンデー」 |
| 連載開始 | 2023年8月18日 |
| 単行本 | 裏少年サンデーコミックス、既刊7巻(最新7巻は2026年8月) |
| 最新話 | マンガワンで第53話(後編)。裏サンデーでは2026年10月30日に第53話(前編)を公開 |
| ジャンル | SFアクション+コメディ |
| 英語版 | アメリカのVIZ Mediaから刊行中(1巻は2025年8月) |
| 主な評価 | 「次にくるマンガ大賞2024」Webマンガ部門ノミネート、「このマンガがすごい!2025」オトコ編7位、「全国書店員が選んだおすすめコミック2025」12位、第3回楽天Kobo電子書籍Award 楽天Kobo特別賞 |
舞台は、エイリアンとの戦争が終わってから50年たった日本です。戦争の爪痕として、昆虫型の「宇宙害蟲」と、凶暴な巨大生物「宇宙害獣」が残っています。その駆除を担う民間軍事会社が乱立し、エイリアンの技術をめぐる争いも激しくなっている。そんな世界です。
主人公の市ヶ谷スミレは18歳。父親が投資に失敗して多額の借金を残して姿を消し、年の離れた弟を守るために、宇宙害蟲の駆除会社で働いています。この「生活のしんどさ」から始まるところが、この作品の一番の強みだと俺は思っています。
作者・ヨシアキ先生について
ヨシアキ先生は、マンガボックスの『蝕人孤蟲』でデビューし、マンガワンの『殺し屋は今日もBBAを殺せない。』で知られる漫画家です。ホンシェルジュの記事によると、2025年2月時点で商業漫画家11年目。線画はアナログで描き、いらない台詞を減らして「画面で魅せる」ことを意識しているそうです。
そして前作を読んだ人には、うれしい仕掛けがあります。本作の「キヨハル」は、『殺し屋は今日もBBAを殺せない。』のキャラと同姓同名で、見た目もそっくり。いわゆるスターシステムです。手塚治虫先生のヒゲオヤジみたいなものだと思うと、ちょっとワクワクしますよね。
出典:マンガペディア「雷雷雷」、Rai Rai Rai(英語版Wikipedia)、ホンシェルジュ(2025年5月9日更新)、BOOK☆WALKER『雷雷雷』7巻、Web漫画アンテナ「雷雷雷」更新履歴
第2章:最新話までのあらすじ(ネタバレ)──害蟲駆除の仕事から、宇宙の歴史へ
物語は、「借金を返すために働く女の子」の話から、巻を追うごとに「人類と宇宙人の歴史」の話へと広がっていきます。まずは単行本ごとに整理します。
| 巻(発売) | 主な展開 |
|---|---|
| 1巻(2023年11月) | スミレがUFOにさらわれ、宇宙害獣ダスキンと融合させられる。ライデン社の狭山ハヅキがダスキンの首を切ると、肉体が再生して二つに分離。スミレは変身能力を得て、同社の討伐部隊へスカウトされる(新人で月収100万円) |
| 2・3巻(2024年4月・9月) | 力を引き出すため、キヨハルによる「訓練」という名の過酷な日々。3巻では、特訓中のスミレの前に、R・R社の切り札・阿良波々岐コハルが現れる |
| 4巻(2025年1月) | 首都上空に巨大なUFOが現れ、スミレの映像を流す。集団アブダクションで宇宙人と対面し、スミレの体は「高次元ジャケット」を与えられた結果だと判明。宇宙人はその回収を申し出る |
| 5巻(2025年6月) | 巨大化したダスキンとキヨハルが参戦する大激戦。スミレの「破壊砲」が甚大な被害を生み、スミレは自分が災害の引き金になったことに苦しむ。ラストで阿良波々岐アツコが登場 |
| 6巻(2026年1月) | 50年前の戦争を終わらせた英雄・アツコとスミレが激突。圧倒的な実力差のなか、スミレはアツコに教えを請う。戦争の前提をひっくり返す「裏側」が語られる |
| 7巻(2026年8月) | 「宇宙最強」アツコとの戦いの末に、スミレは宇宙人の歴史を知る。その裏で、キャスパー率いる軍事企業トライデント社が動き出す |
6巻の衝撃:「宇宙人が地球を壊した」は、本当か
第1話から、この世界は「宇宙人に攻め込まれた後の地球」だと説明されてきました。ところが6巻で、その前提がひっくり返ります。ブログ「タカツテムの徒然雑記」の感想によれば、宇宙人が地球を壊したのではなく、宇宙人になろうとした人類が地球を壊し、宇宙人に助けられた。そんな裏側が語られます。
敵だと思っていた相手が、実は救いの手を差し伸べていたかもしれない。都市伝説好きとしては、「歴史は勝者が書く」を地でいく展開に、もう鳥肌が止まりませんでした。その「人類」の正体は、のちの第49話で明かされます。
7巻以降~最新第53話:世界の軍需企業と、英雄の天秤
7巻の公式の紹介文は、「戦いは次のステージへ。」で始まります。兵器、平和、秩序をめぐって、各勢力の思惑が交錯していく。その言葉どおり、第47話からの物語は、国内の企業どうしの争いから、世界の軍需企業を巻き込む戦いへと一気に広がりました。
| 話数(目安) | 主な展開 |
|---|---|
| 〜第46話ごろ | 世界の軍需企業が集まる国際軍需展示会「DSEI」が舞台に。トライデント社を率いる野心家キャスパーがアツコに接触し、切り札「アルデバラン」の存在をにおわせる。ところが空気を読まないスミレがその見せ場を台無しにして、キャスパーの殺意を買ってしまう |
| 第47話 | 海外の都市で、トライデント社の疑似害獣部隊がアツコを襲撃。アメリカは作戦に一切協力せず、失敗すればキャスパーはテロリスト扱い。それでも彼は、この作戦に全てを懸ける。巨大害獣の口から、帽子に包帯姿の男が現れる |
| 第48話 | 作戦の狙いは高次元ジャケット。ジャケットを壊し尽くすか、心臓を生きたまま抜き取るか。包帯の男の正体は、かつてアツコを「先生」と呼んだベン。彼は自らを「超人アルデバラン」と名乗る |
| 第49話 | 50年前の回想。ベンが志願した「アルデバラン実験」が暴走し、生き物を作り変える黒い球体が出現。宇宙人エリアルから結晶を託されたアツコは、多くの命を選ぶ覚悟を背負う。現在のアツコは、パイロットたちを街ごと薙ぎ払う |
| 第50話「ジェネシス」 | ベンも高次元ジャケットを発動。人質まで取るベンの頭上に、50年前と同じ黒い球体が再び現れる。アツコはベンに「夢は終わり」と告げる |
| 第51話 | アツコがベンを打ち倒す。だが直後、若いころのアツコに似た女が、背後からアツコの心臓を抜き取る。アツコはコハルとキヨハルに後を託して倒れ、キャスパーは「作戦終了」を告げる |
| 第52話 | 3か国が「魔界」と化し、死者・行方不明者は4千万人超。政府はスミレを守るための人間兵器部隊「WEAPONS」を結成。アツコの心臓は今も脈打ち、ジャケットは敵の手に。キャスパーは、50年間隠し持っていたベンの心臓「デーモンコア」を自分に移植し始める |
| 第53話 | WEAPONS本部での共同生活がスタート。ハヅキがダスキンに模擬戦を挑むが、力の差は歴然だった |
※第47話以降の流れは、マンガワンで最新話まで読んだ俺の読後メモをもとにまとめています。話数は目安です。
ちなみに最近は、一話が「前編・中編・後編」に分かれて更新されています。裏サンデーの更新日を追うと、だいたい金曜日。俺にとっては、一週間のご褒美です。
出典:マンガペディア「雷雷雷」、ホンシェルジュ(2025年5月9日更新)、MANGA Watch(3巻発売、2024年9月11日)、タカツテムの徒然雑記(5巻感想)、タカツテムの徒然雑記(6巻感想)、tonomatsuri.com(6巻紹介)、BOOK☆WALKER『雷雷雷』7巻、Web漫画アンテナ「雷雷雷」更新履歴
第3章:主要キャラクター──借金少女と、ぬいぐるみみたいな宇宙害獣と、筋肉の英雄
『雷雷雷』は、「会社」と「会社」の物語でもあります。誰がどの企業に属しているかを押さえると、ぐっと読みやすくなります。
| 名前 | 所属 | どんな人物か |
|---|---|---|
| 市ヶ谷スミレ | ライデン社・雷伍特務部隊 → WEAPONS | 18歳の主人公。元は害蟲駆除会社「サオトメバスターズ」勤務。生真面目だけど遅刻魔で、料理と麻雀が得意。心臓が「コア」に置き換わっている。第52話で、政府から「次に狙われる」と名指しされる |
| ダスキン | ライデン社が管理 | スミレと融合させられた宇宙害獣。日本語を話し、人類を嫌うが、次第にスミレを守るようになる。名前はスミレが飼っていたカブトムシから |
| 狭山ハヅキ | 雷伍特務部隊・副隊長 | 刀「雷刃(ライジン)」とコンバットスーツで戦う。家族を害獣に殺された過去を持ち、スーツのために定期的な検査と透析が必要 |
| 神保ハルヒコ | 雷伍特務部隊・隊長 → WEAPONS隊長 | 麻雀好きの明るいおじさん。妻子を亡くしており、ハヅキを実の娘のように育てた |
| 浅霧ソウスケ | 元・雷伍特務部隊 → トライデント社 | 近接武器「ブラストスピア」の使い手。4巻で受けた傷が変異し、危険な状態に。最新の展開では、キャスパーのそばにいる |
| 歌川キヨハル | ライデン社の裏の部隊 | ダスキンの監視役。生身で本気のダスキンを上回る強さ。アツコの力を受け継ぐ「補機」の一人。前作からのスターシステム |
| 石動デンスケ | ライデン社・社長 | 宇宙害獣をエネルギー源に使う巨大企業のトップ |
| 阿良波々岐コハル | R・R(レッド・ロック)社 | 同社の切り札の少女。変身せずに破壊砲を撃てる。アツコを「ばあちゃん」と呼び、キヨハルと同じく「補機」 |
| 阿良波々岐アツコ | R・R社 | 50年前の戦争を終わらせた「人類最強の英雄」。98歳にして筋骨隆々の老女。英雄と呼ばれるのを嫌い、目的は「世界平和」。宇宙人エリアルとは友人。第51話で心臓を奪われる |
| エリアル | 宇宙人 | 50年前、アツコに高次元ジャケットの大元となる結晶を託した友人 |
| ベン(超人アルデバラン) | トライデント社の切り札 | かつてアツコを「先生」と呼んだ男。50年前に「アルデバラン実験」に志願し、暴走した。死んだと思われていたが、包帯姿で現れてアツコと激突。第51話で倒される |
| キャスパー | トライデント社・社長 | 高次元ジャケットを奪うため、市街地での作戦に踏み切った野心家。「世界を創造する」と語り、ベンの心臓「デーモンコア」を自分に移植しようとする。兄のトラヴィスが側近 |
| 若き日のアツコに似た女(名前未登場) | トライデント社側 | 若いころのアツコにそっくりな女。アツコの心臓を奪い、代わりに自分が使うと言い放つ |
| 山南 | 政府 | スミレの護衛とジャケット奪還のため、人間兵器部隊「WEAPONS」を立ち上げる |
好きなキャラTOP3
- ダスキン:最初はスミレの体を乗っ取ろうとした凶悪な宇宙害獣。なのに分離後はぬいぐるみみたいな姿になって、スマブラにハマる。それでもスミレとの約束は守る。名前の由来がカブトムシって、ずるいです
- 阿良波々岐アツコ:筋肉、老女、人類最強。46歳の俺が目指したい年の取り方は、たぶんこれです。第52話で98歳と判明したので、俺にはあと52年、鍛える時間があります。読者のあいだでは「野沢雅子さんがモデルでは」と話題で、セリフが脳内であの声になるという声も出ています(公式に認められた情報ではありません)
- キヨハル:前作からやってきた男。スミレの力を引き出すためにひどいことをして、それをずっと気に病んでいる。強いのに不器用。こういう男に、俺はとにかく弱いんです
出典:マンガペディア「雷雷雷」、「雷雷雷」キャラクター一覧と相関図(2025年1月26日)、ホンシェルジュ(2025年5月9日更新)、白の本棚(4巻)、タカツテムの徒然雑記(6巻感想)、Togetter(2026年10月25日)、BOOK☆WALKER『雷雷雷』7巻
第4章:最新話の考察──「デーモンコア」の正体と、奪われた英雄の心臓
第52話のサブタイトルは「デーモンコア」。その正体は、50年前にアルデバランから摘出された心臓でした。そしてその直前の第51話では、アツコ自身も心臓を奪われています。いまの『雷雷雷』は、2つの心臓をめぐる物語になっていると俺は読んでいます。
実在した「デーモン・コア」とは
デーモン・コアは、アメリカのマンハッタン計画でつくられたプルトニウムの球体です。広島・長崎に続く3発目の原爆に使われるはずでしたが、終戦で使われずに残りました。
ところがこの球体は、1945年と1946年に2度の臨界事故を起こし、それぞれ研究者が亡くなります。1946年5月21日の事故では、物理学者のルイス・スローティンがマイナスドライバーを滑らせ、致死量の約10倍の放射線を浴びて9日後に亡くなりました。そこから、この球体は「悪魔の核」、つまりデーモン・コアと呼ばれるようになったそうです。
強すぎる力は、使う前から人を殺す。都市伝説やオーパーツを追いかけていると、この手の話には妄想の余地がないほどの重さがあります。
見立て①:アルデバランは、誰かの「後に続きたかった」男
包帯姿で現れたトライデント社の切り札。その正体は、かつてアツコを「先生」と呼んでいた男、ベンでした。50年前、彼は「アルデバラン実験」に志願します。研究者たちは、成功すればアポロ11号を超える快挙になると意気込んでいました。ところが実験は暴走し、ベンは生き物の遺伝子を作り変える黒い球体を生み出してしまう。キャスパーいわく、50年前に世界の人口を半分に減らしたのは、このアルデバランでした。
ここからは俺の見立てです。アルデバランは、おうし座の牛の目のところに輝く、赤っぽい1等星の名前。意味は「後に従うもの」で、プレアデス星団の後から昇ってくることに由来するそうです。そして実験の前夜、ベンは「彼らの後に続く」と口にしていました。偉業の後に続きたかった若者が、「後に従うもの」という名の怪物になる。こんなに皮肉で、悲しいネーミングはありません。
第50話の回想で、ベンは「何者かになりたい」と打ち明けます。この気持ちは、正直わかります。俺も若いころは、カメラ一本で何者かになろうと必死でした。でもベンは、そのために世界を巻き込んだ。アツコが最後に告げた「夢は終わり」という言葉は、50年分の説教だったんだと思います。
見立て②:アツコの「命の天秤」と、英雄と呼ばれたくない理由
第49話の回想で、宇宙人エリアルはアツコに、のちの高次元ジャケットの大元になる結晶を託します。宇宙人は手を差し伸べられない、ここは君たちの惑星だ、と。そしてエリアルは、これから多くの命を選ぶことになる君に全てを背負わせてしまった、と謝る。アツコは、世界が続いていくためなら何だってできる、と引き受けました。これが、アツコの「命の天秤」の始まりです。
6巻のアツコは、英雄と呼ばれるのを嫌っていました。その理由は、第49話で本人の口から語られます。パイロットたちを街ごと薙ぎ払ったアツコを、ベンは、英雄どころかただの大量殺戮兵器じゃないか、となじる。するとアツコは、自分は英雄を名乗ったことなどない、ただの人殺しで、行き先は地獄だ、と言い切るんです。
それでもアツコは、ベンが人質に取った子どもを、とっさにかばってしまう。ベンはそれを「あんたの弱点だ」と笑いましたが、俺にはそこが、アツコが98年間「人間」でいられた理由に見えました。
そしてこの天秤は、いずれスミレにも渡されるはずです。そのとき、月収100万円の18歳がどんな答えを出すのか。そこが、この物語の本当のクライマックスだと思います。
見立て③:奪われた英雄の心臓と、「若き日のアツコ」に似た女
ベンを倒した直後、魔界と化した森で、最悪の事態が起きます。若いころのアツコにそっくりな女が背後から現れ、アツコの胸を貫いて心臓を抜き取ったんです。心臓は仲間が用意したカプセルに収められ、まだ動いていました。女はアツコに、この心臓は自分が代わりに使ってやる、とまで言い放ちます。
第52話で、その意味がはっきりします。アツコは高次元ジャケットの「主機」で、キヨハルとコハルが「補機」。主機が死ねば、力は自動的に補機へ受け継がれる仕組みです。ところが、その兆候がない。キヨハルは、アツコの心臓は今も脈打っていると断言しました。つまりアツコの力そのものが、敵の手の中で生きているわけです。アツコ本人の生死は、まだはっきりしません。
ここからは俺の見立てです。女はアツコに、昔の自分を見るのはどんな気分か、と問いかけていました。血のつながりというより、アツコをもとに作られた存在なんじゃないか。そして奪った心臓を自分に移して、「二代目アツコ」になるつもりなんじゃないか。英雄を作り出せるなら、軍事企業にとってこれ以上の商品はありません。
……ちなみに、20代の俺にそっくりなやつが目の前に現れたら、俺は心臓を奪われる前に、腹筋の差で心が折れると思います。
見立て④:「コア」は、スミレの心臓でもある
心臓の話は、スミレにもつながります。『雷雷雷』の世界で「コア」は、特別な言葉です。ライデン社の戦闘スーツは、宇宙害獣のエネルギーコアで動いています。そしてスミレ自身も、心臓をコアに置き換えられている。
つまりスミレは、胸のなかに「兵器の核」を抱えて生きている女の子なんです。5巻では、その力が生んだ破壊に、彼女自身がいちばん傷ついていました。「触れるものを傷つける核」というイメージは、あまりにもスミレに重なります。
実際、第52話で政府の山南は、次に狙われるのは間違いなく市ヶ谷スミレだ、と断言しました。そしてスミレを守るための人間兵器部隊「WEAPONS」が立ち上がります。英雄の心臓の次は、18歳の心臓。トライデント社の狙いは、もうはっきりしています。
見立て⑤:キャスパーは「デーモンコア」で世界を作り直す気だ
第52話の最後で、ついにサブタイトルの意味が明かされます。トライデント社の地下に保管されていた黒い核。それは、50年前にアルデバランから摘出された、ベンの“心臓”でした。ベンはアツコが隠していると思い込んでいましたが、実際はトライデント社が50年間持っていた。そしてキャスパーは、それを自分の胸に移植する手術に臨みます。死ぬかもしれない、と笑いながら。
実在のデーモン・コアは、危険を承知で扱い続けた研究者の命を、2度も奪いました。強すぎる力に、自分から手を伸ばす。キャスパーの姿は、あの球体をのぞき込んだ科学者たちと重なります。
キャスパーの考えはこうです。アツコは世界の存続を望み、アルデバランは破壊を望んだ。そして自分は、世界を「創造」する。癌細胞を消すには、正常な細胞ごと壊すしかない、とまで言い切ります。現実の「トライデントⅡ」は、イギリスが核抑止の柱にしているミサイルの名前です。でもキャスパーが欲しいのは、抑止力ではなく、50年前の「創世」を自分の手でやり直す力なのかもしれません。
アツコの「存続」、ベンの「破壊」、キャスパーの「創造」。そのあいだに立たされているのが、胸にコアを抱えた18歳のスミレです。この構図、少年漫画としてはとんでもなく重い。でも、だからこそ目が離せないんです。
実在する国際軍需展示会「DSEI」
第47話前後の舞台になったDSEIは、実在する展示会です。正式名称はDefence and Security Equipment International。ロンドンの展示場「ExCeL London」で2年に1度開かれ、2025年の回は62か国から約1,700の出展者が集まる、過去最大の規模だったそうです。
一方で、開催のたびに抗議活動が起き、2017年には会場を封鎖しようとした100人以上が逮捕されています。兵器を売る場所で、平和や秩序が語られる。キャスパーがアツコに近づいた舞台として、これ以上リアルな場所はないかもしれません。
第53話を読んで
第53話は、空気がガラッと変わります。舞台は、ライデン社の地下訓練施設に作られたWEAPONSの本部。スミレはコハルと相部屋になり、大型テレビやゲームをおねだりし、ダスキンはゲームで連勝してイキり倒す。4千万人を超える犠牲が出た直後に、いきなり“合宿所コメディ”が始まるんです。この緩急こそ、『雷雷雷』の真骨頂だと思います。
でも、笑ってばかりもいられません。ハヅキは、自分が足手まといだとわかったうえでダスキンに模擬戦を挑み、まったく歯が立たない。それでも引かずに、使えば人でいられなくなるかもしれないスーツの力に手を伸ばしかけて、神保隊長に止められます。強すぎる力に、自分から手を伸ばす。キャスパーと同じことを、ハヅキは仲間に追いつきたい一心でやろうとしていた。この対比には、胸が痛くなりました。
一方で、キヨハルがコハルに「話がある」と声をかける場面も。アツコに後を託された2人の“補機”が、何を話すのか。そしてDSEIで空気を読まず、キャスパーの見せ場を台無しにしたスミレなら、トライデント社の筋書きだって、いい意味でぶち壊してくれる気がするんです。
出典:ナゾロジー「悪魔の核実験『デーモンコア』とは何だったのか?」(2025年1月12日)、Hondaアウトドア「おうし座」、DSEI(英語版Wikipedia)、長崎大学核兵器廃絶研究センター「英国の核戦力一覧」、マンガワン『雷雷雷』第52話(中編)、マンガペディア「雷雷雷」、「雷雷雷」キャラクター一覧と相関図、BOOK☆WALKER『雷雷雷』7巻、タカツテムの徒然雑記(6巻感想)
第5章:伏線と謎の整理──まだ回収されていない「9つの謎」
53話まで読んでも、解けていない謎は山ほどあります。俺が特に気になっている9つを、手がかりと仮説に分けて整理しました。右の列は、すべて俺の見立てです。
| 謎 | これまでの手がかり | 俺の仮説 |
|---|---|---|
| 奪われたアツコの心臓 | 第51話で、若き日のアツコに似た女が心臓を抜き取る。第52話でキヨハルは、心臓は今も脈打っていると断言。主機が死ねば補機に移るはずの力も、移っていない | 心臓=高次元ジャケットそのもの。トライデント社は、英雄の力を“移植できる兵器”として手に入れた |
| 若き日のアツコに似た女の正体 | アツコに、昔の自分を見る気分はどうかと問い、心臓を代わりに使うと言い放つ。トライデント社側の工作員と行動している | アツコをもとに作られた複製体。奪った心臓を自分に移し、“二代目アツコ”になる |
| キャスパーとデーモンコア | 第52話、トライデント社が50年間保管していたベンの心臓「デーモンコア」を、キャスパーが自分に移植する手術を始める | 50年前の「創世」を、今度は意図的に起こすつもり。成功すれば、キャスパー自身が“第2のアルデバラン”になる |
| 高次元ジャケットの正体 | 4巻で、スミレの体は「高次元ジャケット」を与えられた結果だと判明。第49話で、エリアルがアツコに託した結晶がジャケットの大元だとわかる | 兵器ではなく「救命具」。世界を守るために宇宙人が貸した力だとすれば、「回収」の申し出にも筋が通る |
| スミレのなかの「もう一人」 | 5巻で、スミレのなかに別の何かが棲んでいることがほのめかされる | ジャケットの「前の持ち主」の意識か、記憶が残っている |
| 50年前の戦争の真相 | 6巻と第49話で、ベンが志願した「アルデバラン実験」の暴走が、世界を変えた大惨事だったと判明。キャスパーいわく、人口は半分に | ほぼ回収済み。「宇宙人になろうとした人類」の正体はベンだった。残る謎は、宇宙人側がこの50年で何をしていたか |
| 阿良波々岐家の秘密 | コハルはアツコを「ばあちゃん」と呼ぶ。アツコが「主機」、コハルとキヨハルが「補機」という関係も明らかに | 若き日のアツコに似た女が複製体なら、阿良波々岐の“血”は敵の手にも渡っている。敵と味方に、同じ顔が並ぶ日が来る |
| ライデン社のスーツの代償 | ハヅキは定期的な検査と透析が必要。ソウスケは傷口が変異し、いまはトライデント社側に。第53話では、スーツのリミッターを外せば人でなくなる、と語られる | 「宇宙人になろうとした人類」の過ちが、企業の手でもう一度くり返されている |
| スミレの父の失踪 | 投資に失敗し、多額の借金を残して姿を消した。その後はほとんど描かれていない | 「借金で縛られた少女」という出発点そのものが、いつか物語の本筋につながる |
こうして並べると、どの謎もひとつの問いに集まっていきます。「人間は、宇宙の力を使いこなせるのか」。アツコは使いこなしていて、スミレはまだ振り回されている。その差が、この物語のエンジンになっているんだと思います。
出典:ホンシェルジュ(2025年5月9日更新)、タカツテムの徒然雑記(5巻感想)、タカツテムの徒然雑記(6巻感想)、白の本棚(4巻)、「雷雷雷」キャラクター一覧と相関図、マンガペディア「雷雷雷」
第6章:今後の展開予想──俺はこう読む
※ここから先は、完全に俺の予想です。外れたら笑ってください。
予想1:スミレは「兵器であること」を自分で拒む
5巻でスミレは、自分の力が生んだ破壊にいちばん傷つきました。6巻のアツコは、給料で縛られているスミレを、そこから解き放とうとしているようにも見えます。そして7巻からは、「兵器」を欲しがる軍事企業が動き出した。
だから俺は、スミレがどこかで「雇われた兵器」をやめると予想します。力を捨てるのではなく、使い方を自分で決める人間になる。月収100万円の新入社員が、自分の人生の社長になる瞬間を、俺は見たい。
予想2:コハルとスミレが並び立つ
コハルは、英雄アツコと同じ「阿良波々岐」の苗字を持ち、変身せずに破壊砲を撃てる少女です。6巻の感想記事でも、スミレと並んで「次の世代」として語られていました。
3巻でぶつかった二人が、アツコという同じ「先生」を通して背中を預け合う日が来る。少年漫画の王道ですが、王道だからこそ信じたい。
そしてもうひとつ。アツコは倒れる直前、心の中でコハルとキヨハルに後を託しました。アツコを「ばあちゃん」と呼ぶコハルと、若き日のアツコに似た女。アツコにつながる二人がぶつかる日も、きっと来ると思います。
予想3:ダスキンは最後に「スミレの心臓」を守る
スミレの心臓はコアに置き換わっています。そしてアツコの心臓は、すでに奪われました。もし次に誰かが、スミレのコアを「兵器」として取り出そうとしたら。そのとき前に立つのは、たぶんダスキンです。
もとは体を乗っ取ろうとしていた宇宙害獣が、子どものころのカブトムシの名前をもらって、いつの間にかスミレを守るようになった。その物語の終着点が「守る」でないはずがない。
予想4:スミレは、アツコの「天秤」をひっくり返す
アツコは、より大きな平和のために多少の犠牲を受け入れる「命の天秤」で生きてきました。その英雄が心臓を奪われたいま、天秤は、スミレの手に渡されようとしているのかもしれません。
アツコを取り戻すのか、目の前の誰かを救うのか。どちらかを選べと迫られたとき、スミレは「どっちも助ける」と言って、天秤そのものをひっくり返す。俺はそう予想します。50年前に戦争を終わらせた英雄の答えを、18歳が自分の答えで上書きする。少年漫画なら、そう来てほしいんです。
……どれが当たっても、たぶん俺は泣きます。
出典:タカツテムの徒然雑記(5巻感想)、タカツテムの徒然雑記(6巻感想)、BOOK☆WALKER『雷雷雷』7巻、白の本棚(4巻)、マンガペディア「雷雷雷」
第7章:46歳の俺が、いま『雷雷雷』を読んで思うこと
18歳の借金少女を、父親の目で読んでしまう
スミレの父親は、投資に失敗して借金を残し、姿を消しました。その後始末を背負ったのが、18歳の娘です。進学を諦めて、弟を守るために働く。
高校生の息子と小学生の娘を持つ父親としては、この設定だけで胃が痛くなります。それでも弟のために黙々と働くスミレの姿に、なおさら胃が痛くなる。子どもに後始末を背負わせる大人にだけは、なっちゃいけない。この漫画を読むたびに、そう思います。
「月収100万円」の重さ
ライデン社の討伐部隊は、新人のスミレでも月収100万円。そのかわり、社長自ら「死者が出ることもある」と言うほど危険な仕事です。
俺も映画やドラマの現場で、疑似雨のなかや真夏の岩場でスチールを撮ってきました。もちろん宇宙害獣は出ませんが、「危ない現場ほど燃える」若いころの気持ちは、ちょっとわかるんです。でも今は、稼ぐことより「生きて帰ること」のほうが、ずっと大事だと思える。それが年を取るということなのかもしれません。
同じ技術が、兵器にも道具にもなる
この世界では、宇宙人の技術が企業に渡り、エネルギーにも、兵器にもなっています。俺はいま、XRを使って地域を盛り上げる仕事をしています。人を楽しませるための技術も、使い方ひとつで別のものになる。『雷雷雷』は、その当たり前を、強烈なアクションで思い出させてくれます。
46歳、アツコを見て筋トレを決意する
英雄と呼ばれるのを嫌い、98歳になっても筋骨隆々で、それでも「世界平和」を言い切るアツコ。強さとは、力を振り回すことではなく、力を完全に使いこなすことだと、あの人は体で教えてくれます。……とりあえず俺は、明日から腕立て伏せを始めます。
元スチールカメラマンとして:「説明しない一枚」の強さ
ヨシアキ先生は、いらない台詞を減らして、画面で魅せることを意識しているそうです。これ、写真とまったく同じなんです。現場の写真も、説明しすぎない一枚がいちばん多くを語る。迫力のある見開きに出会うたびに、「この人は、画で殴ってくる漫画家だ」と思います。
出典:マンガペディア「雷雷雷」、ホンシェルジュ(2025年5月9日更新)、タカツテムの徒然雑記(6巻感想)
第8章:これから『雷雷雷』を読む人へ──どこで、どの順番で
連載は、小学館のマンガアプリ「マンガワン」とWebサイト「裏サンデー」で読めます。単行本は裏少年サンデーコミックスで既刊7巻。英語版もVIZ Mediaから出ているので、海外の友人にもすすめられます。
俺のおすすめの順番
- まずは単行本1~4巻。「借金少女の就職物語」から、高次元ジャケットの謎までを一気に
- 次に5~7巻のアツコ編。ここから物語のスケールが一段上がります
- 追いついたら、マンガワンで最新話へ。更新を待つ楽しみが、一週間にひとつ増えます
前作『殺し屋は今日もBBAを殺せない。』も読むと、キヨハルが出てきた瞬間に「お前、ここにいたのか」となれて、楽しさが倍になります。
『怪獣8号』に似てる?
これはよく聞かれるので、正直に書いておきます。平凡な主人公が怪獣に変身できるようになる出だしが『怪獣8号』に似ている、という声はたしかにありました。ホンシェルジュの記事もその指摘に触れたうえで、「パクリパクられの関係にあるとは言えません」と書いています。
俺の感想も同じです。読み進めるほど、借金、企業、戦争の真相と、まったく別の方向に深くなっていく。気になっている人こそ、6巻まで読んでみてほしいです。
出典:マンガペディア「雷雷雷」、Rai Rai Rai(英語版Wikipedia)、ホンシェルジュ(2025年5月9日更新)、Togetter(2026年10月25日)
おわりに──宇宙最強の力より、働いて家族を守る毎日のほうが強い
長々と語ってきましたが、最後に。
『雷雷雷』は、宇宙人と怪獣と軍事企業の物語であり、同時に「働いて、家族を守る」物語です。世界の真実がどれだけ大きくなっても、スミレの原点は「弟を守るために働く18歳」のまま。だから俺は、この漫画を信じて読めます。
ヨシアキ先生。金曜の更新、いつも本当にありがとうございます。
今夜は北千住で、腕立て伏せ10回から始めます。アツコ先生、どうか無事でいてください。そして、見ててください。
次回予告
最新話が更新されたら、この記事にも追記していく予定っす。バイブル考察も、⑫に向けて準備中。「この作品を語ってくれ!」というリクエストは、X(@bambooquest)までどうぞ。
ではまた、次のクエストで!