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『シャンバラッド』レビュー

© 眞山継/講談社

一言レビュー

これ 「未来が見える側が守り、未来が見えない側が突っ込む」 っていうバディの噛み合わせが、最初から強いです。


関係者の皆さま、画像・内容に問題がある場合はご連絡ください。速やかに対応いたします。
※ここから先はネタバレを含みます。


作品データ

  • 作品名:シャンバラッド アフタヌーン公式サイト
  • 作者:眞山継(『てがきのエデン』『プラチナム』などを経て連載開始)
  • 連載:good!アフタヌーン(2025年2月7日発売号から新連載)
  • ジャンルの打ち出し:東洋×男女バディ×王宮ファンタジー
  • 導入(公式要約):
    貧しい山岳地域から王都へ下りてきた青年ラジャンが、御瞳(みどう)と呼ばれる占いで国を導く少女アムリタを襲撃から救う。王宮の悪政に苦しむ民の前でなす術のないアムリタは、旧王朝の末裔でもあるラジャンに王の器を見出すが、同時に彼に訪れる不幸な未来も見抜いてしまう。

この作品、バディ物の役割分担が政治劇に直結してます

王宮ファンタジーって「剣が強い」「魔法が強い」がエンジンになりがちじゃないですか。
でも『シャンバラッド』の推進力は、もっと政治寄りです。

  • アムリタ:国を導く占い(御瞳)=正当性・象徴・予言
  • ラジャン:山岳育ちの正義感+旧王朝の末裔=実行力・血筋・政争の火種

つまりこの2人、能力がバディとして噛み合うだけじゃなくて、存在自体が国家の争点になってる。
ここが強いです。恋愛の甘さより先に「権力が寄ってくる」構造が立ってる。


占いが盾になる世界は、同時に刃にもなる

公式の打ち出しが「盾は占い、矛は度胸」。これ、ただの決め台詞じゃないです。
占いが国を導く=つまり、政治の意思決定が「合理性」より「託宣」に寄る。

この世界で占いは守りになる。
でも守りになるってことは、占いの解釈を握った瞬間に統治になる。
占いが盾であるほど、盾の持ち主(アムリタ)は攻撃対象になるんですよね。襲撃から救う導入がそれを最初に提示してる。

ここが面白いところで、アムリタは「見える側」だからこそ動けなくなる可能性がある。
見えた未来が怖いと、人は守りに入る。
でも国は守りだけじゃ救えない。
だから見えない側(ラジャン)の度胸が必要になる。バディの必然が立ってるんですよ。


ラジャンの血筋が、正義を即「政争」に変える

ラジャンは旧王朝の末裔、と公式に明言されています。
これ、最悪に強い設定です。なぜかというと――

  • 正義で動くと「担がれる」
  • 担がれると「敵が増える」
  • 敵が増えると「正義が濁る」

っていう、政治劇の地獄を自動で呼び込むからです。

本人が王になりたいかどうかより、周囲が「王にしたい/したくない」で動き始める。
王宮の悪政に挑むって打ち出しがある以上、ラジャンは武器としても旗としても使われる。
ここが物語を長距離で走らせる背骨になりそうです。


バディ物の良さは「相互依存」じゃなく「相互制御」に出る

男女バディって支え合いに寄せると綺麗なんですけど、面白さが出るのはむしろ逆で、
互いの欠点で互いを止められる状態なんですよ。

  • 予言が見えるアムリタは、冷静になれるけど、踏み込みが鈍る
  • 度胸のラジャンは、踏み込めるけど、引き際を見誤る

この2人が組むと、
アムリタは「踏み込み」を借りて、ラジャンは「引き際」を借りる。
つまり支え合いじゃなく、相互制御。これが政治劇に向く。

王宮って、強いだけの人は潰されるし、賢いだけの人も潰される。
強さと賢さのバランスを、人物じゃなくバディ構造で作ってるのが上手いです。


悪政の描き方が「民の苦しみ」から入ってるのが好感

公式あらすじでも「王宮の悪政に苦しむ民」が先に置かれてます。
これ、地味に効きます。

王宮ファンタジーって、陰謀→主人公の成り上がり、になりがちですけど、
民の痛みを先に見せると「倒す理由」が綺麗になる。
綺麗になると、ラジャンの正義感が青臭さじゃなく原動力に見える。

ただし副作用として、正義が強いほど、今度は「正義の運用」が問われる。
倒した後どうする?
制度は?
誰が責任を取る?
このへんに踏み込めたら、作品が一段上に行くと思います。


登場人物考察:この2人、役割が最初から国家級です

ラジャン:正義感の青年、だけど担がれ体質の危険人物

ラジャンは分かりやすく好感が持てるタイプです。
ただ旧王朝の末裔って時点で、本人の善良さと関係なく政治利用が始まる。
つまり彼の成長は、「強くなる」より「担がれ方を選ぶ」方向に行くはずです。

アムリタ:象徴(御瞳)であるがゆえに、個人の感情が許されない

御瞳と呼ばれる占いで国を導く少女。これ、もう個人じゃなく制度ですよね。
象徴になると、善意ですら監視される。
その重さがあるからこそ、彼女がラジャンに王の器を見る瞬間は、恋愛というより政治の投資になる。
未来が見える側が選ぶ相手って、基本、重いです。

王宮(環境):最初から「敵」ではなく「泥」として存在してる

悪政がはびこる王宮に挑む、って打ち出し。
ここで王宮は悪役の城じゃなく、倫理を濁らせる泥として機能するはずです。
正義が泥でどう汚れるか。汚れた正義をどう立て直すか。ここが見どころになりそうです。


こんな人におすすめ

  • 王宮ファンタジーが好きだけど、政治劇の手触りが欲しい人
  • 男女バディが好きで、「役割分担が綺麗に噛む」構造に弱い人
  • 占い/予言が力じゃなく責任として描かれる作品が刺さる人

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まとめ

先輩、この作品は「王宮で戦う」ってより、
国を動かす役割を背負った2人が、背負った瞬間から狙われる話なんですよ。

  • 占い(御瞳)は盾だけど、盾を握る者は標的になる
  • 血筋は希望だけど、希望は道具にされる
  • バディは支え合いじゃなく相互制御として機能する
  • 悪政の相手は悪役じゃなく、倫理を濁らせる環境(王宮の泥)

だから第1話の掴みが強い。
ここから「正義をどう運用するか」まで踏み込めたら、かなり長く追えるやつです。

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