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最近読んで面白かった漫画「この世は戦う価値がある」 レビュー

— 25歳・限界OL、人生の総決算は段取りで殴れ

© こだまはつみ/小学館

関係者の皆さま、画像・内容に問題がある場合はご連絡ください。速やかに対応いたします。

※ここから先はネタバレを含みます。


作品の前提

  • タイトル:この世は戦う価値がある
  • クレジットこだまはつみ(小学館・ビッコミ連載/週刊スピリッツ系)
  • あらすじ:25歳の伊東紀理。入社3年目、仕事不調・セクハラ職場・モラハラ彼氏で限界状態の中、一通の封書が届く——ここから「人生の総決算」が始まる。怒りで殴らず、記録・段取り・ToDoで現実を切り分けて前に進むヒューマンドラマ。
  • 掲載ビッコミ(シリーズページあり)/更新曜日は時期により変動(初期は水曜更新の表記あり)/待つと無料対象(期間・対象話は変動)。
  • シリーズの現在地(例):第51話「轢き逃げ犯を見つけて。」(2025年10月6日公開)。
  • シリーズページhttps://bigcomics.jp/series/c034297654d2d ビッグコミックス

エナドリの塔と封書一通。ここから「総決算」は始まる

入社3年目・伊東紀理。机にはエナドリが積まれ、職場はセクハラ&空気読め地獄、恋人はモラ。役満。そこへ届く、一通の封書。「25歳、そろそろ人生の棚卸ししようか?」とでも言いたげな、物語の起爆剤だ。物語はド派手な逆転ではなく、段取りと観察で現実を削っていくタイプ。だから読後に残るのは名セリフよりやることリストだ。
この「弱点を運用でねじ伏せる」姿勢は、記事[うちがキングダムレビュー](https://bicbamboo.com/uchiga-kingdom-biccomi-review/)で語った“家庭内政=段取りの政治化”と地続き。旗より議事録、勇気よりToDo。えらい、地味に刺さる。作品ページの「25歳、人生の総決算ドラマ!」という惹句は伊達じゃない。読者の月曜朝に効く。


事件ではなく勘定科目で現実を割る

この漫画の美点は、問題を「人格」ではなく勘定科目に割り振るところ。

  • 仕事不調 → 技量と環境を切り分け、可変要素(段取り・伝え方)に集中
  • セクハラ環境 → 記録・証拠・相談窓口という制度の梯子をかける
  • モラ恋人 → 感情の借金を元本と利息に分けて判断
    要するに、怒りは燃やすのではなく仕訳する。だから読み口は静かなのに、手応えはゴリゴリに現実的。連載は現在51話まで進行(2025年10月6日更新時点)。章ごとに現実の摩擦をひとつずつ切り分け、小さな勝ちで積み上げる構造だ。

主人公・伊東紀理:情けなさとロジックのハイブリッド

紀理は「泣き寝入りの代名詞」ではない。泣きながら動く人だ。

  • できる約束は小さく、期日は短く。
  • 「怖い」「嫌だ」を行動の阻害要因として明文化。
  • 相談は同意を取りに行くのではなく、事実の棚卸しから入る。
    この動きの良さが、物語の密度を上げる。ときどきズッコケても、失敗の翻訳が速いから致命傷にならない。読者は、彼女の「翻訳の速さ」に勇気をもらうはず。だって我々の月曜もHP5。でも段取りが強ければ死なないのだ(既視感:[HP5×オートヒールレビュー]—同じ思想で笑えます)。

「父に会う。」編—逃げていた過去に手順で触る

中盤の山場は「父に会う。」連続回。人間関係の巨石を、感情で押さずに工程表で割りほぐしていく。

  1. 目的定義:謝罪か、説明か、線引きか。
  2. 論点整理:過去の事実/いま困っていること/今後の関わり方。
  3. 場づくり:第三者・時間・場所・連絡手段。
  4. 評価:面談後の体調・気分・行動、何が軽くなったか。
    この会いに行くためのToDoが、読んでいて現実に移植しやすい。泣き崩れるドラマではなく、準備で勝ち目を作るドキュメンタリー

「轢き逃げ犯を見つけて。」——正義の炎を監査に変換

最新話サイドでは「轢き逃げ犯を見つけて。」が象徴的。私刑の昂揚に乗らず、情報の監査として組み立て直す。

  • できること/できないことの線引き
  • 証拠の消耗を抑える触らない勇気
  • 警察・保険・近隣の接点一覧の作成
    正義は感情の熱量ではなく、記録の冷たさで前に進む。こういう冷静さを、読者は密かに待っていたのでは。2025年10月6日公開の51話タイトルが端的で、連載の現在地を示す。

生活コメディとしての小口現金

本作のユーモアは、日常の小口現金で回る。


作画・テンポ:沈黙の余白が強い

こだまはつみの線は、感情の濃さと余白(間)のメリハリが良い。重いテーマの回でも、コマ運びに呼吸があるから息切れしない。テキスト量が乗る回はメモ的配置で読みやすく、ギャグは一歩引いた構図で笑いの余地を残す。だから長尺の回でも情報の消化が速い。シリーズページの読者評価やお気に入り数も高水準で、手触りの良さが数字に出ている(★約2,900/お気に入り10万超、ページ表示時点)。


まずどこから読む?

  • 第1〜3話:総決算のコンセプトと紀理の運動量に慣れる
  • 「北山家の話。」:家族サイドの地層を掘る重要回(2024年10月28日)
  • 「父に会う。」連作(〜45話):工程で感情に触る手つきの精度を味わう
  • 「轢き逃げ犯を見つけて。」(51話):現在地。正義を監査に翻訳する技。
    ビッコミの「待つと無料」を活用すると、クールダウンを挟みながら読み進められて相性が良い。

この世は「戦う価値」がある。けれど、戦い方は選べる

この作品は「戦え」と煽らない。戦い方を設計せよと言う。

  • 問題は人格でなく科目に分ける
  • 感情は工程で受け止める
  • 正義は記録で進める
    その姿勢が、人生の総決算にふさわしい品の良さを持っている。拳ではなく、議事録ToDoで勝ちにいく漫画。読んだ翌朝、机の上の紙が1枚だけ減る——その小さな変化が、たぶん一番大きい。

出典

  • © こだまはつみ/小学館(英語:© Hatsumi Kodama / Shogakukan)
  • 参考・出典:
    • ビッコミ「この世は戦う価値がある」シリーズページ(作品概要・更新導線・人気指標)
    • 51話「轢き逃げ犯を見つけて。」(2025年10月6日公開・最新エピソード確認)
    • 42話「父に会う。」など連作の配信ページ(エピソード時期)
    • 32話「北山家の話。」(2024年10月28日)

購入:https://amzn.to/47jNqn1

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