はじめに──『超人X』、いま一番「化けてる」漫画っす
ども、バンブークエストっす。
ラグナ、キートン、ターちゃん、狂四郎、PSYRENと走ってきて、次に何を書くか。答えは最初から決まってました。
石田スイ先生の『超人X』っす。
『東京喰種トーキョーグール』で世界を獲った作家が、2021年5月10日から「となりのヤングジャンプ」で描いている超人バトル漫画。単行本は2026年9月17日発売の17巻まで出ていて、Web連載は第78話①(10月10日公開)まで進んでいます。
で、これがいま、とんでもなく面白い。
塔の上でゾラとの戦いに決着がついて、「さあ大団円か」と思ったその瞬間。空から、大量の飛行機が降ってくる。舞台はヤマトから「七州」全土へ広がり、新しい敵「IIゲルタ」との戦争が始まる。16〜17巻で、物語のスケールが一段どころか三段くらい跳ね上がったんすよ。
『超人X』って聞いただけで、肩甲骨のあたりがムズムズします!!!(翼は生えません。46歳なんで)
この記事では、1巻からの流れを整理しつつ、いま最高潮の「七州×IIゲルタ」の戦いまでを細かく掘ります。超人化のルール、キャラの能力、伏線、そして都市伝説好きとして見逃せない「超人伝説」との対比まで。行きますよ。今回もモリモリで。
⚠️ 関係者の皆様、なにか不都合な点などございましたらすぐにご連絡ください。当記事は即刻削除いたします。
※ここから先は、単行本17巻と最新話(第78話①)までのネタバレを含みます。

まずは現在地:超人X最新情報(2026年10月20日時点)
最新話は第78話①(10月10日公開)、最新刊は17巻(9月17日発売)です。Web連載は第76話(8月8日)→第77話①(9月12日)→②(9月26日)→第78話①と進んでいて、9月以降は土曜の昼12時に、2週間おきで更新されています。
| 日付 | 出たもの | 公式のあらすじ・告知をひとことで |
|---|---|---|
| 2026年10月10日 | 第78話① | 予見が示す地「モゲ」へ出航…と思いきや、船が故障。暇になったトキオ一行は稽古へ |
| 2026年9月26日 | 第77話②「チーズパスタ」 | トキオが新人2人に出した次の試練は、チーズ探し |
| 2026年9月17日 | 単行本17巻 | 七州全土で「IIゲルタ」との戦いが続き、七州連合軍は若手キーパーの育成を急ぐ |
| 2026年6月18日 | 単行本16巻 | 鵺が倒れた直後、空から大量の飛行機がヤマトへ。窓月子が何者かに殺害されていた |
| 2026年2月19日 | 単行本15巻 | 鵺を倒したのも束の間、ゾラから力を得た超人たちを、感じたことのない痛みが襲う |
| 2025年11月19日 | 単行本14巻 | 徴(しるし)を奪った星・バチスタが過去の書き換えを狙い、世界に「縫い目」が現れる |
| 2025年8月19日 | 単行本13巻 | 塔の上でトキオはゾラとの対話を選ぶ。その瞬間、ゾラの左手が宙を舞う |
| 2025年4月17日 | 単行本12巻 | 「ゾラが死ぬと、ゾラから力をもらった人間は死ぬ」。エリイが衝撃の事実を知る |
出典:第77話②・第77話①(となりのヤングジャンプ)、石田スイ公式Xの更新告知、集英社『超人X 16』、各巻の内容紹介、Wikipedia英語版
序盤の1〜2巻は2021年12月17日に同時発売。2022年12月には累計100万部を突破しています。英語版はVIZ Mediaから出ていて、MANGA Plusでも日本と同時に配信中。ちなみに確認できた範囲では、アニメ化の公式発表はまだありません。このブログの「取り上げた漫画はアニメ化する」ジンクス、今度こそ先回りできるかもしれないっす。
作品概要:1〜15巻をざっくりおさらい
『超人X』は、超人が当たり前にいる世界で、ふたりの高校生が「超人になってしまった」ところから始まる物語です。
- 作者:石田スイ(『東京喰種トーキョーグール』『同:re』)
- 連載:となりのヤングジャンプ(2021年5月10日〜)。2021年10月〜2022年2月は週刊ヤングジャンプにも掲載
- 単行本:ヤングジャンプコミックス、既刊17巻
- 舞台:1998年。超人のせいで国家が崩れて50年以上がたち、世界は「自治県」に分かれている。主人公たちが暮らすのは自治県「ヤマト」
物語は、大きく3つの段階で進んできました。
① 超人になる(1〜5巻)
始まりは、黒煙を上げて墜落していく飛行機。犯人は「煙の超人」チャンドラ・ヒュームで、乗っていた少女・乙田エリイは、この事件で超人になります。
同じころ、気弱な高校生・黒原トキオと、文武両道の親友・東アヅマは、超人になった不良に襲われます。逃げ場のないふたりが打ったのは、超人化の注射器。トキオは「獣化の超人」として目覚め、ハゲタカのような姿に変わります。一方でアヅマは、この時点では目覚めません。この「逆転」が、後々まで効いてきます。
閉園後の動物園で「白蛇の超人」ナリと戦ったあと、トキオたちは善の超人を育てる組織「ヤマトモリ」に出会います。そして治安を守る「キーパー」を目指し、「獣島」で訓練を受けることになります。
② 予見の獣ゾラ(6〜12巻)
ここから敵の格が一気に上がります。弔いの塔に住むゾラは、実はヤマトモリの創設者・白羽ソラ。彼女はヤマトの未来を「黒き災い」として予見し、ヤマトが滅びると告げます。その未来を変えるため、トキオはゾラの力を継ぐよう迫られます。
塔からの脱出、ヤマトへの帰還、オールドマーケット作戦。ゾラが飲んでいるのと同じ薬の売人を追い、ついにヤマトモリは「打倒、ゾラ」に手をかけます。
ところが12巻で、最悪の事実が出てきます。「ゾラが死ぬと、ゾラから力をもらった人間は死ぬ」。つまり、ゾラを倒せばトキオたちも死ぬ。倒すべき敵と、守りたい仲間の命が、一本の糸でつながってしまったんです。
③ 塔の決戦(13〜15巻)
塔の上層で、トキオは戦うのではなく「対話」を選びます。ヤマトの未来がゾラからトキオに託されようとしたその瞬間、ゾラの左手が宙を舞います。
犯人は、星・バチスタ。徴(しるし)を奪った彼は、体に寄生する「鵺」の力と合わせて世界に「縫い目」を作り、過去を自分の望む形に書き換えようとします。この歪んだ時空からバチスタを現実に引き戻したのは、エリイの説得でした。
そしてトキオたちは、ついに鵺を倒しきります。これで全部終わった……と思ったら、ゾラから力を得た超人たちを、感じたことのない痛みが襲います。徴が、消えかかっていたんです。
ここまでがいわば「ゾラの物語」。そして16巻から、まったく新しい戦いが始まります(この先は後半の章で掘ります)。
出典:各巻の内容紹介(1〜10巻、13〜17巻)、マンガペディア『超人X』、RENOTE
石田スイという作家:『東京喰種』から『超人X』へ
石田スイ先生は、週刊ヤングジャンプで『東京喰種トーキョーグール』(2011〜2014年)と『東京喰種トーキョーグール:re』を描いた作家です。『超人X』は、その『:re』完結から約3年ぶりの新連載でした。
その3年のあいだに、Nintendo Switchのゲーム『ジャックジャンヌ』(2021年3月18日発売、ブロッコリー)で原作とキャラクターデザインを担当。シナリオや世界観設定にも関わり、160枚を超えるイベントイラストまで描いています。漫画家が、ゲーム1本の「顔」を丸ごと作る。冷静に考えて、とんでもない仕事量っす。
そして2021年5月10日。『超人X』の連載開始にあたって、石田先生はX(当時はTwitter)でこう書いています。
今作は背景や仕上げも一人で描いてみたいので、更新はマイペースになりますが、…
背景も仕上げも、一人。撮影現場で言えば、照明も美術もメイクも、全部ひとりで回すようなもんです。20年スチールをやってきた身として断言しますが、これは狂気っす(褒めてます)。『超人X』の更新が不定期なのは、この「一人で描く」という選択の裏返しなんですよね。Web連載ならではの「①②」と分割された話数の刻み方も、たぶんこの作り方とセットです。
『東京喰種』と並べると見えてくるもの
| 東京喰種 | 超人X | |
|---|---|---|
| 主人公が怪物になった経緯 | 喰種の臓器を移植され、半分喰種に(本人の意思ではない) | 襲われた夜、自分で超人化の注射を打った |
| 怪物の呼び名 | 喰種 | 超人 |
| 怪物を管理する側 | CCG(喰種対策局) | 超人登録制度と、ヤマトモリのキーパー |
| 舞台 | 現代の東京 | 1998年、国家が崩れた後の自治県ヤマト |
一番大きいのは1行目です。金木は「されて」怪物になり、トキオは「選んで」怪物になった。この差が、作品の空気を丸ごと変えています。『喰種』が「怪物にされた悲劇」なら、『超人X』は「怪物になったあと、どう生きるか」の物語なんです。
そして、グロとギャグの同居。七州を巻き込む戦争の真っ最中に、最新話のサブタイトルが「チーズパスタ」。世界の危機にチーズ探し回をぶっこんでくる。この緊張と脱力の振り幅こそ、石田スイっす。
出典:ファミ通.com(連載開始)、ファミ通.com(ジャックジャンヌ)、マンガペディア『東京喰種』、第1話(2021年5月10日公開)
登場人物紹介:これだけ押さえれば迷子にならない
『超人X』はキャラが多くて、途中で迷子になりがちです。まずは主役3人と、物語を動かす大人たちだけ押さえておきましょう。
| 名前 | 能力・立場 | ひとこと |
|---|---|---|
| 黒原トキオ | 主人公で16歳。「獣化の超人」で、ハゲタカのような姿に変わる。ヤマトモリのキーパー | 最初は「アヅマがいないと何もできない」系男子。それが今や、新人に試練を出す側っす |
| 東アヅマ | トキオの幼なじみ。成績優秀で正義感が強く、父は警察官僚。超人化は遅れて訪れる | 父の教え「義を見てせざるは勇なきなり」を地で行く男。だからこそ、12巻の「ころせ!」が刺さる |
| 乙田エリイ | ガガ県出身で「トメイト」農家の娘。飛行機事件で超人化し、煙を操る。他の超人の力を取り込む性質も持つ | 16巻で新たに徴を受け取る。農業を目指す俺としては、トメイト農家の娘ってだけで推せます |
| 宍塒パルマ | 9巻でトキオに救われる超人。ゾラと同じ薬の売人を突き止めるきっかけに | 中盤から存在感がぐっと増す、実質的な四人目の主役 |
| ゾラ(白羽ソラ) | 弔いの塔の主で、ヤマトモリの創設者。未来を視る「予見」の超人 | 黒き災いを止めるためなら、どんな犠牲も払う。悪役なのに、妙に筋が通ってるのが怖い |
| 星・サンダーク | ヤマトモリの教官で、エリイを保護した人物。能力は「無疵天則(インテグラル・コスモ)」 | ゾラと真正面から渡り合える、数少ない規格外 |
| 星・バチスタ | サンダークの弟。仮面で素顔を隠し、超人化の薬を流していた。体に「鵺」を宿す | 14〜15巻の黒幕。過去を書き換えてでも、取り戻したいものがあった |
| 窓月子 | ヤマトモリの長。白羽ソラとのあいだに確執があった | 16巻で、塔の戦いのさなかに殺害されていたことが判明 |
| 籠村シモン | ヤマトモリの守衛。剣の超人 | 無表情なのに、実は面倒見がいい |
| 百萬マイコ | ヤマトモリの守衛。常人の100倍の筋力 | 後輩にやさしい怪力の先輩。ターちゃん記事の読者なら好きなはず |
| チャンドラ・ヒューム | 「煙の超人」。1話の飛行機墜落を起こした張本人 | すべての始まりの男 |
| ウメザワリリカ/リカルド・テラー | 「切り絵の超人」と「畏怖の超人」。かつてトキオをさらった敵側のペア | 第77話で、まさかのトキオ一行に合流 |
| アルル・シャント/聲森レトリック | 17巻から登場する新しい顔 | ヤマトからヒゴへ向かう列車で、突然「刃倶」に襲われる |
出典:マンガペディア『超人X』、RENOTE、各巻の内容紹介(1〜10巻、13〜17巻)、TV Tropes、OtakusNotes
超人とは何か:超人化のルールと世界観を整理する
『超人X』の超人は、「選ばれし者」ではありません。登録制度で管理され、街に普通にいる「制度の中の存在」です。まずは用語を整理します。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 超人 | 超常の能力を持つ人間。1998年のこの世界では、街に普通にいる存在 |
| 超人化のきっかけ | 公式が「様々である」と言い切るほど多様。トキオとアヅマは注射器(超人化の薬)、エリイは飛行機事件。籠村一族の剣のように、一族で受け継がれる力もある |
| 超人登録 | 超人は登録が必要で、未登録だと能力の使用は禁止。A級は研究や社会貢献のための使用も可、B級は自衛や人を守るときだけ |
| ヤマトモリ/キーパー | 善の超人を育て、能力を悪用する超人を取り締まる私設機関と、その実働部隊 |
| 信号(コール) | 超人同士が感じ取るサイン。うなじが痛むような感覚で伝わる |
| 混沌(カオス) | 能力が暴走した状態 |
| 修復(レイズ) | 超人の力で体を治すこと |
| 完全獣化 | 獣化の超人が、さらに一歩踏み込んだ姿 |
| 徴(しるし) | ゾラの力の核。ゾラから力を受け取った者たちの命とつながっている |
物語を動かしてきたのは「徴」
中盤以降の『超人X』は、ほぼ「徴をめぐる物語」だと言っていいと思います。公式のあらすじだけで追っても、この流れが見えます。
- 12巻:「ゾラが死ぬと、ゾラから力をもらった人間は死ぬ」と判明
- 13巻:塔の上で、ゾラの左手が宙を舞う
- 14巻:徴を奪った星・バチスタが、過去の書き換えを始める
- 15巻:鵺を倒したあと、徴が消えかかり、力を受け取った超人たちが痛みに苦しむ
- 16巻:エリイが新たに徴を受け取る
力をもらうことは、命を預けること。この世界の「強さ」は、いつも誰かとの契約とセットなんですよね。
そして、タイトルの「X」
英語圏のファンWiki(TV Tropes)では、「超人X」は作中で特別な超人に与えられる呼び名で、ゾラはその先代にあたる、と整理されています。トキオたちは、その力を弱めた形で受け継いでいる、とも。
もしそうなら、このタイトルは連載初回からずっと「次の超人Xは誰だ?」と読者に問い続けていることになります。Xは「未知数」のX。答えは、まだ空欄っす。
出典:マンガペディア『超人X』、RENOTE、各巻の内容紹介(4巻など、12巻、13〜16巻)、TV Tropes
いま最高潮!16巻〜第78話の見どころ(ネタバレ)
16巻からの『超人X』は、ヤマトの物語から七州全体の戦争へと一気に広がりました。そして同時に、トキオが「導かれる側」から「導く側」へ回る物語になっています。俺が「最高潮」と言い切る理由を、4つに分けて語らせてください。
① 空から飛行機が降る:1話の「再演」
鵺が倒れ、エリイが新たに徴を受け取り、一件落着。そう見えた瞬間、空から大量の飛行機がヤマトに降り注ぎます。
思い出してほしいんです。この漫画の1話は、黒煙を上げて墜落していく飛行機から始まりました。『超人X』において、飛行機はずっと「災いの始まり」の合図なんです。1機で始まった物語が、16巻では「大量」になる。セルフオマージュの拡大版で、もう鳥肌っす。
しかも同じ巻で、塔の戦いのさなかにヤマトモリの窓月子が何者かに殺害されていたことが判明します。みんなが塔を見上げていたあいだに、足元で何かが起きていた。この「視線の外し方」が、石田先生は本当にうまい。
②「我々に予見は必要ない」
16巻の公式あらすじは、この一文で締められています。
我々に予見は必要ない
6〜15巻は、ゾラの「予見」に振り回される物語でした。未来が見える者と、その未来に抗う者。その物語が終わった直後に、「予見なんていらない」と言い放つ者が現れる。物語のルールそのものが、ひっくり返った瞬間です。誰の台詞かは、ぜひ本編で確かめてください。
③ 七州×IIゲルタ:戦争と、新しい世代
16巻のサブタイトルには「2003年3月までのこと《前編》《後編》」が並びます。物語開始は1998年。サブタイトルを見る限り、物語の時計はここで一気に進みます。
そして17巻。舞台は七州全土で、敵は「IIゲルタ」。各地で防衛戦が続いても戦況は動かず、七州連合軍は若手キーパーの育成を急ピッチで進めることになります。そんな中、ヤマトからヒゴへ向かう列車に乗っていたアルル・シャントと聲森レトリックが、突然「刃倶」の攻撃を受ける。17巻には「新参者たち」というサブタイトルの回もあります。
ここで一番グッとくるのは、世代交代です。1話ではアヅマのケンカを後ろで見ているだけだった少年が、いまや新人に試練を出す側にいる。少年漫画の王道の成長を、石田スイ先生は17巻かけて、ちゃんと積み上げてきたんです。
④ 第77〜78話:戦争の真っ只中の「旅の章」
Webの最新話は、意外なほど穏やかです。第77話②のサブタイトルは「チーズパスタ」。トキオが新人2人に出した次の試練は、まさかのチーズ探しです。しかも第77話では、かつてトキオをさらったウメザワリリカとリカルドのペアが、まさかの一行入り。
続く第78話①では、予見が示す地「モゲ」へいざ出航!……と思いきや、船が故障。暇になったトキオ一行は、稽古をすることになります。
七州全土が戦場なのに、やってることはチーズ探しと船の上の稽古。でも、これがいいんですよ。映画の現場でも、本番前の待ち時間こそが一番チームを作ります。元敵と新人と先輩が、同じ船で同じ稽古をする。この「嵐の前の寄せ集め」が、後で絶対に効いてくると俺は読んでます。
そして気になるのが「予見が示す地」という言葉。「我々に予見は必要ない」と言う者がいる一方で、トキオたちは予見を頼りに航海している。予見を捨てた者と、予見を信じる者。この対立が、新章の軸になりそうです。
出典:集英社『超人X 16』、17巻の内容紹介、Wikipedia英語版(各巻のサブタイトル)、第77話②、石田スイ公式Xの更新告知
深掘り考察:『超人X』が描いているもの(3つの視点)
ここからは俺の考察です。結論から言うと、『超人X』は「過去と未来に取り憑かれた大人たちに、いまを生きる少年が答える物語」だと思っています。
視点① 能力は「心の形」をしている
トキオの能力は獣化で、なる姿はハゲタカ。カッコいい鷹でも鷲でもなく、ハゲタカです。いつもアヅマの後ろにいた少年に、「おこぼれをついばむ鳥」の姿を与える。この意地悪さと優しさが、石田スイ先生っぽい。
エリイもそうです。彼女には他の超人の力を取り込む性質があり、海外ファンWikiでは、彼女の母親が「悪名高い泥棒」だったとも整理されています。能力は、その人の生い立ちや劣等感を映す鏡。だからこの漫画のバトルは、いつも「自分との戦い」を兼ねているんです。
視点② ゾラは「未来」に、バチスタは「過去」に取り憑かれていた
6〜15巻の二大巨頭を並べると、きれいな対になっています。
- ゾラ:「黒き災い」という未来を視てしまった人。未来を変えるためなら、いまを犠牲にできる
- 星・バチスタ:失ったものを取り戻すため、過去を書き換えようとした人。過去に生きるためなら、世界を歪められる
そしてトキオは、塔の上で「戦い」ではなく「対話」を選びました。バチスタを現実に引き戻したのも、エリイの「説得」。未来にも過去にも逃げず、「いま」で話す。これがこの漫画の主人公たちの戦い方なんですよね。
46歳になると、俺にもよくわかります。将来の不安も、あの時こうしていればも、尽きない。でも結局、動かせるのは今日だけなんですよね。
視点③「超人と普通の人は、一緒に暮らせるのか」
この漫画の超人は、登録制で管理され、A級・B級で使える場面が分けられています。力は「許可制」。まるで運転免許か、狩猟免許です。
だからこそ、「力を持ってしまった子どもを、社会はどう受け入れるのか」という問いが、ずっと底に流れている。高校生の息子がいる身としては、ここが一番刺さります。トキオもアヅマも、ちょうどうちの息子と同じ年ごろで、ある夜、注射器を打ってしまったんですよ。
『東京喰種』が「怪物にされた子」の物語なら、『超人X』は「怪物になった子を、周りの大人と社会がどう育てるか」の物語。そしていま、その子が次の世代を育てる側に回った。だから最新章は、こんなに熱いんです。
出典:各巻の内容紹介(13〜16巻)、マンガペディア『超人X』、TV Tropes
名シーンBEST5:俺の心に刺さった瞬間
全部、公式のあらすじにも書かれている範囲のシーンから選びました。これから読む人は、「この場面で何が起きるか」だけ覚えておいてください。
第5位:閉園後の動物園、白蛇の超人ナリ戦(2巻)
超人になったばかりのトキオと、トメイト農家の娘エリイが、巨大な蛇になるナリに追い詰められる。逃げ場をなくしたとき、エリイはトキオに、逃げるよう告げます。最初の大きな戦いで、もう「誰かを逃がすために残る人」を描く。この漫画の優しさの原点です。
第4位:エリイの説得、過去から帰るバチスタ(15巻)
過去を書き換え、そこで生きようとした星・バチスタを、現実に引き戻したのは拳ではなくエリイの言葉でした。「倒す」より「帰らせる」。バトル漫画としては異例の決着で、だからこそ忘れられません。
第3位:アヅマに告げられた「ころせ!」(12巻)
BB率いる小隊は「殲血の超人」バドロブラドを倒せず、絶体絶命。そのときアヅマは、ある場所で、ある者から「ころせ!」と告げられます。「義を見てせざるは勇なきなり」を胸に生きてきた優等生に、この三文字。正しさを信じてきた人間ほど、この漫画は容赦なく試します。
第2位:墜落する飛行機と、注射器(1巻)
黒煙を上げて落ちていく飛行機。そして、逃げ場のない夜にふたりで打った注射器。物語のすべてがここから始まり、16巻の「飛行機の雨」で、このシーンの重さがもう一度更新されました。読み返すたびに意味が増えていく1話って、そうそうないっす。
第1位:塔の上の「対話」、そして宙を舞う左手(13巻)
多くの犠牲を払って、ようやくゾラの前に立ったヤマトモリ。そこでトキオが選んだのは、戦うことではなく話すことでした。ヤマトの未来も、世界の未来も、すべてがゾラからトキオに託されようとしたその瞬間、ゾラの左手が宙を舞う。
1話ではアヅマのケンカを後ろで見ているだけだった少年が、ラスボスに対話を挑む。その答えが出る前に、第三者が全部をぶち壊す。公式あらすじの締めは、この一文でした。
《悪》が生まれるとき、《英雄》もまた生まれる――
少年漫画の「英雄の誕生」を、こんな形で描くか。俺の中の『超人X』ベストシーンは、文句なしにここです。
伏線と謎のリスト:次に動くのはどこか
いま『超人X』に残っている大きな謎は、8つに整理できます。右の列は、あくまで俺の読みです。
| 謎 | どこで出たか | 俺の読み |
|---|---|---|
| 窓月子を殺したのは誰か | 16巻:塔の戦いのさなか、ヤマトモリで殺害されていた | 全員の目が塔に向いていた時間を知っていた人物。内部の人間を疑ってます |
| 「我々に予見は必要ない」は誰の言葉か | 16巻:公式あらすじの締め | 「我々」という複数形がミソ。個人ではなく、組織の宣言だと読んでます |
| IIゲルタとは何者か | 17巻:七州全土で戦争中の相手 | 「II」が気になる。二代目なのか、2つ目の何かなのか |
| 刃倶とは何者か | 17巻:ヤマトからヒゴへの列車を襲う | 新世代が最初にぶつかる壁。ここで若手の実力が測られる |
| 予見が示す地「モゲ」 | 第78話①:トキオ一行が船で向かう | その予見は誰のものか。新たな徴を持つエリイに関係があるとにらんでます |
| 2003年3月までに何があったのか | 16巻:サブタイトル | 空白の年月で、トキオたちは何を失い、何を得たのか |
| 「はじめに黒い海があった。」 | 17巻:公式あらすじの締め | 創世神話の書き出しそのもの。世界の成り立ちに踏み込む予告では |
| 次の「超人X」は誰か | タイトルそのもの | トキオか、新たに徴を受け取ったエリイか。俺はまだ決めきれません |
出典:集英社『超人X 16』、17巻の内容紹介、Wikipedia英語版、石田スイ公式X
都市伝説・オカルト視点:現実の「超人」伝説と並べてみる
『超人X』の「1998年」という舞台設定は、オカルト好きの目で見ると「世紀末」そのものです。ここからは、俺の本領発揮っす。
① 1998年と「恐怖の大王」
ゾラが予見したのは、ヤマトが滅びる「黒き災い」でした。
現実の1998年の日本はどうだったか。「1999年7の月、空から恐怖の大王が降ってくる」というノストラダムスの予言が、まだ本気で語られていた時代です。火付け役は、1973年の五島勉『ノストラダムスの大予言』。大ベストセラーになって日本中にノストラダムス・ブームを起こし、1974年には映画にもなりました。
そして16巻で空から降ってくるのは、大量の飛行機。「空から来る災い」と「世紀末」。偶然かもしれませんが、ムーとMMRに育てられた1980年生まれの俺は、ここで鳥肌が止まりませんでした。ちなみに1998年、俺は18歳。トキオたちとほぼ同世代っす。
②「超人」という言葉の出どころ
「超人」と言えば、ニーチェの『ツァラトゥストラはこう語った』(1883〜1885年)に出てくる「超人(ウーバーメンシュ)」が有名です。人間を乗り越えていく存在、という哲学の理想像ですね。
ところが『超人X』の超人は、登録制度で管理され、力の代償に苦しみ、ゾラのように薬を手放せない者までいる。人間を乗り越えるどころか、誰よりも「人間臭い」。哲学の超人とは真逆の、生身の超人なんです。
③ 国家が本気で研究した「超能力」
これは都市伝説じゃなく、記録が残っている話です。アメリカでは1972年からスタンフォード研究所(SRI)で「遠隔透視(リモート・ビューイング)」の研究が始まり、1977年には陸軍に専門の部隊まで置かれました。
のちに「スターゲート・プロジェクト」と呼ばれるこの計画は、CIAが委託した評価で「情報収集への継続利用は正当化できない」と結論づけられ、1995年に終了して機密解除されています。
現実の国家は、超能力を「使えない」と判断して手放した。でも『超人X』の世界では、超人は実在し、七州連合軍は若手キーパーを急いで育てて戦場に送る。この漫画は、「もし本当に使えていたら」の世界線とも読めるんです。
④「はじめに黒い海があった。」
17巻の公式あらすじは、この一文で終わります。「はじめに〜があった」は、ヨハネの福音書の書き出し「初めに言があった」と同じ型です。
しかも、旧約聖書の創世記では、世界のはじまりは闇に覆われた深い水。日本神話でも、イザナギとイザナミが矛で海をかき回して、最初の島が生まれます。世界の神話は、なぜか「最初に暗い水」から始まりたがるんですよね。
石田先生がこの書き出しを選んだのは、物語が「超人はどこから来たのか」という世界の起源に踏み込む合図じゃないか。オーパーツ好きとしては、いまここが一番ワクワクしてます。
出典:Wikipedia英語版「Ben Goto」、Wikipedia英語版「Nostradamus in popular culture」、ブリタニカ「Thus Spake Zarathustra」、Wikipedia英語版「Stargate Project」、17巻の内容紹介
今後の展開予想(妄想込み)
俺の予想は、「モゲで予見をめぐる答え合わせがあり、新章の敵の正体が見えてくる」です。以下は全部妄想なので、外れたら笑ってください。
予想① モゲで「予見」の答え合わせ
一方には「我々に予見は必要ない」と言い切る者たち。もう一方には、予見が示す地へ船を出すトキオたち。モゲは、この2つの考え方が正面からぶつかる場所になるはず。IIゲルタの「予見を捨てた理由」が、そこで語られると読んでます。
予想② 新人2人と元敵ペアが、次の物語を背負う
若手キーパーの育成、「新参者たち」というサブタイトル、そしてトキオが出す試練。これだけ材料が揃うと、新世代が次の主役になる流れはもう見えています。
ウメザワリリカとリカルドは、裏切りフラグを心配する声もあります。でも俺は、「敵だった者が、新人の前で先輩の顔をする」展開に賭けます。相手を倒すより、話して帰らせる。それがこの漫画の戦い方ですから。
予想③ エリイの徴が「黒い海」の鍵になる
16巻で新たに徴を受け取ったエリイ。他の超人の力を取り込む彼女が徴を持った以上、このまま穏やかに済むとは思えません。「はじめに黒い海があった。」の謎に、徴とエリイが深く関わってくると俺は読んでます。
予想④ 最後にもう一度、トキオとアヅマの「逆転」が来る
1話では、落ちこぼれのトキオが先に超人になり、優等生のアヅマはなれませんでした。物語は「逆転」から始まったんです。
だから最後も、もう一度逆転が来る。今度はアヅマがトキオを救うのか、それとも二人が向き合うのか。少年漫画の親友は、最後に一度は本気でぶつかるもんだと、俺は『うしおととら』のころから信じてます。
超人Xを読むなら:これから読む人へ
最新話を追うなら「となりのヤングジャンプ」、まとめて読むなら単行本17巻です。
- Web:最新話は「となりのヤングジャンプ」で公開。9月以降は土曜の昼12時、2週間おきの更新です。公開期間を過ぎた回は読めなくなるので、気になったら早めに
- 単行本:ヤングジャンプコミックスで既刊17巻。16巻は244ページで924円(税込)
- 英語版:VIZ Mediaから刊行。MANGA Plusでも配信中
読む順番は、こんな区切りで考えると楽です。
- 1〜5巻:超人になるまでと、ヤマトモリの世界観をつかむ
- 6〜12巻:ゾラ編。用語と人間関係が一気に増えるので、この記事の人物表と用語表を横に置くのがおすすめ
- 13〜15巻:塔の決戦。ここまで来たら止まりません
- 16〜17巻+Webの最新話:七州×IIゲルタの新章
『東京喰種』を読んだことがある人は、絵の変化にも注目してみてください。背景も仕上げも一人で描く、と宣言した作家の「手の痕跡」が、ページの隅々に残ってます。
出典:第76話(公開終了の表示)、集英社『超人X 16』、Wikipedia英語版
まとめ:Xは「未知数」のX。だから、いま読む
1998年、墜落する飛行機と一本の注射器から始まった物語は、ゾラの予見とバチスタの過去を越えて、七州全体の戦争へ広がりました。
そして、アヅマの後ろでケンカを見ているだけだった少年が、いまは新人に試練を出し、元敵と同じ船に乗っている。この成長を、17巻かけて丁寧に積み上げてきたからこそ、いまの『超人X』は最高潮なんです。
次の超人Xは誰なのか。黒い海とは何なのか。答えはまだ空欄です。でも、空欄だからこそ、いまリアルタイムで追う価値がある。最新話が出たら、この記事も追記していきます。
「超人X」って聞いただけで肩甲骨がムズムズする仲間の皆さん。第78話②で、また会いましょう。