最近読んで面白かった漫画 漫画/COMIC

最近読んで面白かった漫画「バスタード・ソードマン」

ほどほどに戦い、よく遊ぶ。
ショートでもロングでもない中途半端な剣=バスタードソードを片手に、おっさんギルドマン・モングレルが今日も生き延びる。やろうと思えば無双できるギフト知識があるのに、あえてやらない。釣りと料理と、ちょっとした厄介ごと。これをあまり冒険しない冒険譚と呼ばずして何と呼ぶ。

© Mask the J 2024 © James Richman, Daichi Matsuse 2024© KADOKAWA/Dengeki Comics NEXT

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※ここから先はネタバレを含みます


まず一言レビュー

中途半端の哲学が、異世界の呼吸を整える。
無双もしない、大志も掲げない。それなのに気持ちいい。理由は明快で、生活の温度がちょうどいいから。ギルド仕事は低め常温、手元のご飯は湯気ほかほか、戦いは必要最小限。ページをめくると、読者の心拍がモングレル基準に落ち着いていく。


作品データ

  • 作品名:バスタード・ソードマン
  • クレジット:マスクザJ(漫画)/ジェームズ・リッチマン(原作)/マツセダイチ(キャラクター原案)。掲載はKADOKAWAのカドコミ(コミックウォーカー)、コミックスは電撃コミックスNEXTから。
  • コミックス:1巻(2024年9月27日発売)ほか。
  • 原作(小説):KADOKAWA/エンターブレイン(ファミ通文庫)から書籍化。
  • あらすじ要点:
    • バスタードソードは“何でもできて何にもできない”中途半端な剣
    • モングレルの夢は平和にだらだら。無双も文明改革もできるけど、やらない
    • 仕事(ギルド)・飯・釣り、そしてたまの厄介ごとが物語をゆっくり回す。

ここが面白い

1)中途半端は“弱点”じゃなく設計思想

本作の主役はバスタードソード。ショートより取り回しに難があり、ロングよりリーチに欠ける——だからこそ運用で勝つ。状況適応と引きの判断が戦闘の肝になって、読後に戦い方=生き方が重なる。中庸は無難ではなく、選択である。

2)あまり冒険しない冒険が心地よい

事件は起きる。けれどスケールを盛らない。解決はギルドの段取り、地元の伝手、台所の知恵。生活圏の半径で回るから、ページが進むほど“明日につづく息継ぎ”が身につく。これはスロー・ガジェットとしての物語運用。

3)労働×余暇のタイムマネジメント漫画

働く→遊ぶ→たまに戦うの三拍子。やる気を出し過ぎない主人公が、適度な義理ほどよい逃げ足で日々を回す。ギルド仕事の低摩擦運用が小気味よく、読者側の過度な自己啓発疲れをやさしく剥がす。

4)武器目線の世界把握

剣の長短・重心・握り替え——武器の理屈が地味に効く。数値やスキル名のドヤ説明ではなく、体の動かし方に話が落ちてくるので、読み味が身体知に変換される。

5)飯・釣り・手仕事の余白が主菜

釣れた魚をさばいて、火加減で味を決める。この余白こそ主菜。戦闘シーンの前者後者に置かれることで、勝ち負けでは測れない日が暮れる満足が積み上がる。


キャラクターメモ

  • モングレル:おっさんギルドマン。ギフト持ちだが、やればできるをやらない派。釣りと飯がQOLの柱。
  • ギルドの面々/地元勢:肩入れしすぎない距離感で互酬性をまわす。頼り頼られ、義理は軽く、恩は重く

読み口とテンポ

  • 1話に事件→段取り→折り合い→余韻が収まるショートレンジ設計。
  • 戦闘は一瞬の判断で魅せ、余暇パートで体温を戻す。
  • 説明は武器・地の利・人間関係に集約。記号の羅列で煽らない。

どこから読む?

  • カドコミ(コミックウォーカー)の連載ページが入口。無料話で空気を吸ってから単行本へ。カドコミ (コミックウォーカー)
  • コミックス第1巻はKADOKAWA 電撃コミックスNEXT(2024/9/27)。電子も各ストアで入手可。KADOKAWAオフィシャルサイト
  • 原作の書籍版(ファミ通文庫)は2023/5/30スタート。小説から入るのも手。

似ているようで違う、比較軸

  • 無双しない系異世界日常:力はあるが行使しない点が肝。力の誇示より生活の設計に寄る。
  • 武器視点の愉しみ:スキル名やレア装備のインフレに逃げず、中庸の運用で勝つ。
  • 労働×余暇の均衡:仕事を増やさず、生活の段取りで魅せる。

メタ視点:メディア越境の余白

コミカライズは線の抜きが上手く、の気配が紙面に残る。原作(小説)は行間で合理と怠惰のせめぎ合いを描くため、両方読むと“だら活の作法”が立体化。静かなアニメ化適性も高いが、キモは音量を上げない音響だと思う。


生活に持ち帰れるバスタ式ハック

  • 撤退は美徳:引けるときに引く。次の飯がうまい。
  • 台所を整える:勝ち負けより、戻る場所を用意。
  • 義理は軽く、恩は重く:人間関係は持続可能な厚みで。
  • 中庸の練習:最適解より壊れない解

まとめ

中途半端を生きる技術。
『バスタード・ソードマン』は、強さや成功の最大値ではなく、日常の最適稼働温度を教えてくれる。戦いはたまに、段取りはこまめに、飯はちゃんと。あまり冒険しないのに読後が豊か——この逆説を、ぜひ一話だけでも味わってほしい。

購入:https://amzn.to/47amQxC


公式・配信リンク(試し読みあり)


要点サマリー

  • 何が良い? 中庸の選択/あまり冒険しない冒険/武器視点の身体知。
  • 誰に薦める? 無双に疲れた人、段取りで勝ちたい人、台所で機嫌を直したい人。
  • どこから? コミックウォーカーの無料話→単行本1巻→原作へ。(カドコミ (コミックウォーカー))

(本記事は公表情報の要約・編集を含みます。最新巻や配信状況は各公式の案内をご確認ください。)

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